「私はフリーランスで、妻は会社員。住宅ローンって私一人で組むしかないのかな…」
そんな悩みを抱えているあなたに、ぜひ知っておいてほしいことがあります。フリーランス・個人事業主の住宅ローン審査において、配偶者がサラリーマンであることは最大のアドバンテージです。
私はこれまで15年間、不動産営業として数多くのフリーランスの方の住宅ローンをサポートしてきました。その中で、「配偶者の力を借りる」という選択肢を知らずに苦労されている方を何人も見てきました。
この記事では、フリーランス・個人事業主が配偶者と一緒に住宅ローンを組む方法とそのメリット・デメリットを、現場の実例をもとに解説します。
フリーランスこそ「2人の力」を活用すべき理由
フリーランス・個人事業主が単独で住宅ローンを組む場合、直近3期分の確定申告書の提出が求められ、その平均所得で審査されるのが一般的です。しかし、配偶者がサラリーマンであれば話は大きく変わります。
先日相談に来られたAさん(37歳・Webデザイナー)のケースをご紹介します。Aさんは独立して5年目で、直近3期の平均所得は約350万円。単独では希望する4,500万円の物件に対して3,000万円程度の融資しか見込めませんでした。
ところが、会社員の奥様(年収450万円)とペアローンを組むことで、合計4,500万円の借入れに成功しました。審査では奥様の安定収入が大きく評価され、Aさん2,000万円・奥様2,500万円という形で理想の物件を購入できたのです。
ペアローン・収入合算・連帯保証って何が違うの?
「2人で住宅ローンを組む」といっても、実はいくつかの方法があります。それぞれの特徴を整理しましょう。
ペアローン
夫婦それぞれが主債務者となり、2本の住宅ローン契約を結ぶ方法です。お互いが相手の連帯保証人にもなります。
メリット:
- 2人とも団体信用生命保険(団信)に加入できる
- 2人とも住宅ローン控除を受けられる(最大の節税効果)
- 借入可能額を最大限増やせる
デメリット:
- 契約が2本なので諸費用(印紙代・事務手数料など)が2倍かかる
- 2人とも収入がないと審査に通りにくい
- 物件は共有名義になる
収入合算(連帯保証型)
主債務者(例:夫)の収入に、配偶者(例:妻)の収入を合算して審査を受ける方法です。契約は1本で、収入合算者は連帯保証人になります。
メリット:
- 諸費用が1本分で済む
- 金融機関によっては収入合算者がパートでも可能
デメリット:
- 連帯保証人は団信に加入できない
- 連帯保証人は住宅ローン控除を受けられない
収入合算(連帯債務型)
主債務者と収入合算者の両方が債務者となり、同等の返済義務を負う方法です。フラット35などで利用できます。
メリット:
- 諸費用が1本分で済む
- 2人とも住宅ローン控除を受けられる
- フラット35なら2人とも団信加入可能(デュエット)
デメリット:
- 取り扱っている金融機関が限られる
- フラット35のデュエットは金利0.18%上乗せ
実際にBさん夫婦(夫:フリーランスエンジニア・妻:正社員)のケースでは、ペアローンと連帯債務型で迷われていました。最終的に、諸費用を抑えつつ2人とも住宅ローン控除を受けられるフラット35の連帯債務型を選択。年間約40万円×2人=80万円の控除枠を確保でき、「こんなに戻ってくるなんて驚きました」と喜ばれていました。
親子ローンという選択肢も
配偶者以外にも、親子で協力する「親子ローン」という方法もあります。
親子ペアローンは親子それぞれが契約者となり、2本の住宅ローンを同時に返済していく形です。親子リレーローンは1本の契約で、最初は親が返済し、途中から子が引き継ぐ形になります。
先日、独立して2年目のCさん(32歳・フリーランスライター)が相談に来られました。単独では3期分の確定申告書がないため審査が厳しい状況でしたが、会社員の父親(58歳・年収600万円)と親子ペアローンを組むことで、3,800万円の融資を受けることができました。
「父も定年前に家を建て替えたいと考えていたので、ちょうど良いタイミングでした」とCさん。親子で協力することで、お互いの希望を叶えられた好例です。
最大のメリット:審査通過率と融資額が劇的にアップ
フリーランス・個人事業主が配偶者や親と協力して住宅ローンを組む最大のメリットは、審査通過率が大きく上がることと融資可能額を大幅に増やせることです。
2026年1月現在、多くの銀行では夫婦の年収が同程度の場合、ペアローンなら単独の借入れの約2倍近い金額を借りられる可能性があります。例えば、年収600万円の夫婦がそれぞれ住宅ローンを組む場合、単独なら約5,000万円のところ、ペアローンなら約9,000万円の借入れが可能になるケースもあります(審査条件により変動)。
私が担当したDさん(フリーランスコンサルタント・平均所得400万円)は、会社員の奥様(年収500万円)とペアローンを組むことで、単独では難しかった都心のマンション(5,200万円)を購入できました。「フリーランスだから諦めていたエリアに住めて、本当に嬉しい」と話されていたのが印象的でした。
知っておくべきデメリットと注意点
もちろん、デメリットもあります。最も重要なのは共有名義になるという点です。
物件の売却や処分には2人の同意が必要
共有名義の物件を売却したり、抵当権を設定したりする場合、必ず名義人全員の同意が必要になります。これは日常生活ではあまり問題になりませんが、離婚時には大きな問題になりがちです。
過去に担当したEさん夫婦のケースでは、離婚協議中に物件の処分で揉めてしまいました。夫は「売却して財産分与したい」、妻は「子供の学区の関係で住み続けたい」と主張が対立。最終的には妻側が夫の持分を買い取る形で解決しましたが、追加の住宅ローンを組む必要があり、かなりの負担になってしまいました。
途中で収入が減った場合のリスク
ペアローンの場合、どちらか一方が収入を失っても、もう一方の返済義務はそのまま続きます。
例えば、Fさん夫婦(夫:フリーランス、妻:会社員)の場合、奥様の出産・育児休暇中も夫婦それぞれの返済は続きました。「事前に貯金を準備していたので何とかなりましたが、想像以上に大変でした」とFさん。
ペアローンや収入合算を検討する際は、産休・育休・転職・事業の不調など、収入が減るリスクも考慮しておくことが重要です。
借り換えが難しくなることも
将来的に借り換えを検討する際、2人とも審査を受ける必要があります。どちらかが退職していたり、健康上の理由で団信に加入できなくなっていたりすると、借り換えができないケースもあります。
住宅ローン控除で年間最大80万円の節税も
ペアローンや連帯債務型の大きなメリットが、2人とも住宅ローン控除を受けられる点です。
2026年1月現在の制度では、住宅ローンを利用して省エネ基準適合住宅を購入した場合、年末のローン残高の0.7%が最長13年間、所得税・住民税から控除されます。
例えば、夫婦それぞれが2,500万円ずつペアローンを組んだ場合:
- 夫:年末残高2,500万円×0.7%=年間約17.5万円の控除
- 妻:年末残高2,500万円×0.7%=年間約17.5万円の控除
- 合計:年間約35万円の控除(最大13年間で約455万円)
単独で5,000万円のローンを組んだ場合も同様の控除額ですが、所得税・住民税の納税額が少ない場合、控除しきれないことがあります。ペアローンなら2人で分散できるため、控除を最大限活用できる可能性が高まるのです。
私が担当したGさん夫婦(夫:個人事業主、妻:会社員)の場合、夫単独では所得が少なく控除しきれなかったのですが、妻とペアローンにすることで年間約50万円の控除を受けられています。「毎年確定申告が楽しみ」と笑顔で話されていました。
実際の手続きはどうすればいい?
フリーランスでペアローンや収入合算を利用する場合、以下の書類が必要になるのが一般的です(2026年1月現在):
フリーランス側:
- 確定申告書の控え(直近3期分)
- 所得税の納税証明書(直近3期分)
- 事業税の納税証明書(該当する場合)
サラリーマン側:
- 源泉徴収票(直近1〜2年分)
- 住民税課税決定通知書
金融機関によって必要書類は異なりますが、フリーランス側は原則3期分の書類が必要と考えておきましょう。ただし、SBI新生銀行など一部の銀行では2期分で対応可能なケースもあります。
重要なのは、フリーランスの方は所得を確認される点です。節税のために経費を多く計上している場合、所得が少なくなり審査に不利になることがあります。住宅購入を検討している場合は、数年前から確定申告の内容を意識しておくことをお勧めします。
金融機関選びのポイント
ペアローンや収入合算を扱っている金融機関は多いですが、フリーランスの審査基準は金融機関によって大きく異なります。
フリーランスに比較的寛容な金融機関:
- SBI新生銀行(業歴2年以上でOK)
- フラット35(連帯債務型、業歴の明確な基準なし)
- PayPay銀行(個人事業主向け商品あり)
一方、メガバンクなど大手の銀行は原則として業歴3年以上を求めるケースが多い傾向にあります。
私が担当したHさん(フリーランス2年目)の場合、業歴の関係で都市銀行では審査が通りませんでしたが、SBI新生銀行で無事に承認されました。「銀行によってこんなに違うんですね」と驚かれていました。
結論:フリーランスこそ2人の力を活用すべき
フリーランス・個人事業主にとって、住宅ローンのハードルが高いのは事実です。しかし、配偶者がサラリーマンであれば、それは大きなアドバンテージです。
15年間の経験から断言できるのは、フリーランスで配偶者や親がサラリーマンの場合、単独で申し込むよりもペアローンや収入合算を使った方が審査通過率も融資額も大幅に改善するということです。
確かに共有名義になるデメリットはありますが、それ以外の実生活で困ることはほとんどありません。離婚時の問題も、事前にしっかりと話し合っておけば回避できます。
住宅ローン控除を2人とも使える点も見逃せません。条件によっては年間数十万円の節税になり、数百万円単位で家計に余裕が生まれることもあります。
まとめ
- フリーランス×サラリーマン配偶者はゴールデンコンビ:審査通過率と融資額が大幅アップ
- ペアローン・収入合算・親子ローンなど複数の選択肢:自分に合った方法を選ぶ
- 最大のメリット:審査に通りやすくなり、借入可能額が増える
- 住宅ローン控除を2人分活用:年間最大で数十万円の節税効果
- デメリットは共有名義:売却・離婚時に注意が必要だが、日常生活では問題ない
- 金融機関選びが重要:フリーランスに寛容な銀行を選ぶ
「フリーランスだから…」と諦める前に、配偶者や親の協力を得られないか検討してみてください。それが理想の住まいを手に入れる最短ルートかもしれません。
何かわからないことがあれば、遠慮なく複数の金融機関や不動産会社に相談してみましょう。きっとあなたに合った方法が見つかるはずです。
※本記事の内容は2026年1月現在の情報に基づいています。住宅ローンの条件や税制は変更される可能性がありますので、最新情報は各金融機関や税理士にご確認ください。

